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2009年12月18日金曜日

DJ Kensei『Tight7』 Indopepsychics『Meckish』


90年半ばの東京屈指の王道HipHopDJは、突然アンダーグラウンドに身を沈めることになり、その後、エレクトロニカ~ハウスを経由し徐々に地上に昇り、結果ジャズに辿り着く。これが後追い世代のボクから見たDJ Kensei。
DJ Kenseiを支持する人たちはある一定の年齢層に偏っていて、ボクたちの世代にはあまり居ない気がする。で、なぜそんなことになるのか、というと、DJ Kenseiの豊かな音楽経験の足跡を辿るには余りにも彼の過渡期の作品資料が少ないからじゃないかな、と。つまり「点」は分かってもそれが「線」になり辛いから、後追いクンはDJ Kenseiの全体像を把握しにくいんですね。
それらの「点」のうちの一つ、アングラHipHop~エレクトロニカ期のDJ Kenseiを記す今回紹介する音源は今までドップリ浸かっていた東京HipHopコミュニティというぬるま湯から抜け出し、全く新しい場所へ踏み出した彼の実像を描き出す。そこに感傷的な過去の思い出や新天地に踏み出していく気概のようなものはまっくない。つまり、明らかに過去と断絶されたDJ Kenseiがそこに記されているのだ。これは他の「点」においても同様で、この話はこの話の元に戻る、つって。
99年のDJプレイを収めた『Tight7』で行われているインストブレイクビーツ中心の選曲は既にエレクトロニカ前夜(そういう意味ではこれが「線」か)のDJ Kenseiの輪郭を描き出していると言えるでしょう。特に中盤が後のDJ Kenseiを知ってると非常にエレクトロニカ的に聴こえて、おもしろい。全く同じ曲をKrushもよくかけてたけど、DJによってこうも聴こえ方が違うものか。
また、東京エレクトロニカブームの立役者だった中期Indopepsychics(Kensei, Nik, Doi)名義のRemix
とコンピ提供曲を集めた『Meckish』は『Tight7』と地続きである所謂地に足ついたビートを聴くことができる。ビートが完全に狂ってて、その狂い方だけで7分半聴かせてしまう「Femi Kuti - Sorry Sorry (Indopepsychics Remix)」がベスト。他にも重要作「UNKLE - The Knock (Indopepsychics Remix)」や、大塚広子さんのMixにも入ってたクラシック「J-Treds - Praise Due (Indopepsychics Remix)」等、聴き所は多い。Indopeのドラムはこの先どんどん液体化が進んで遂には完全に溶けてしまい、上モノだけがふわふわ浮することになるんだけど、それはまた後のお話。
この頃の「点」がボクの琴線に触れてしまった為に、この先DJ Kenseiがどう変化しようと、ボクの中のDJ Kensei像はこの二枚から大きく逸脱することはないでしょう、な。

2009年12月12日土曜日

松浦亜弥『松浦亜弥ベスト1』『想いあふれて』



思えば、本格的にJ-POPを聴くようになったのはタワレコがこのベストを大々的に売り出していた時に耳にした「ね~え?」がきっかけだったので感慨深い一枚です。で、やっぱり「ね~え?」を含む資生堂三部作はどれも「パパンケーキ」と並ぶ完璧なJ-POP。キラキラで、プリプリで、下品というか。松浦は商品として完成され過ぎていて、月島きらりと比べると下品さが足りないけど、それも一般層へのセールスを考えると妥当なのかもしれません。まさに国民的アイドル!・・・だったのかな?リアルタイムで聴いてなかったから当時の彼女のポジションはよく分かりませんが、多分人気あったんでしょうね!

「Yeah!めっちゃホリデイ」もベストで聴いて良さを再確認。はるな愛の物真似で最近また耳にする機会が増えたこの曲、実はAメロが凄いのです。オリエンタルなトラックの上でアブストラクトな歌詞を歌い、加えて“わらわ”口調・・・こりゃトリップしちゃいますよ。ちなみにこの曲のセルフカバーはDJ用(?)にイントロを延ばしてくれているのでありがたいです。
あと、“下北沢”を“シモキタ”と言いたい年頃の心境を見事に描写したデビューシングル「ドッキドキ!LOVEメール」の歌詞の異常性。ドキドキが止まらないくだり以外がリアル過ぎます。あたかも松浦亜弥本人が作詞しているのかと錯覚させるこんな異常な詩を作ったのは誰なのかとクレジットを見るとやっぱりつんく氏なんですね、流石。
つまならいバラードに陥りがちなテーマを見事に昇華させた「LOVE涙色」も何気に凄いと思います。
というか、デビューから「奇跡の香りダンス。」までのシングル曲だけ聴くと、「100回のKISS」と「草原の人」以外は全部素晴らしすぎる!凄まじい打率です。
ただ、森高千里のかバー「渡良瀬橋」、谷村新司作詞・作曲の「風信子(ヒヤシンス)」あたりから雲行きが怪しくなるんですよね。上述のシングル郡で松浦亜弥は最新のポップスを歌わせたら超一流ってことが実証されているにも関わらず、ここにきて00年代の空っぽ!具合から逸脱した時代錯誤な楽曲提供が増えてきちゃうんですよ。う〜ん。


で、その悪しきプロダクションの延長で作られた最新アルバム『想いあふれて』は一時期に比べると幾分マシなんですが、やはり、酷い。右も左も退屈バラード、退屈R&Bで埋め尽くされてとても一枚通して聴けません。その中でも爽やか四つ打ち曲「レスキュー!レスキュー!」なんかはまだ聴けるのですが、これがかつて「ね~え?」を歌っていたアイドルだと思うと、まるで彼女自身のアイドル人生のエンディング曲を聴いている様な気持ちになって、悲しい。
もしかして松浦亜弥が音楽的に幸福だった時期はタレントとしてのそれより遥かに短かったのではないか、そう感じさせるベスト&最新アルバムでした。

2009年12月11日金曜日

月島きらり『きらりと冬』



月島きらり starring 久住小春(モーニング娘。)の「パパンケーキ」。個人的にはついに理想のJ-POP誕生って感じの曲でした。これがリリースされた716日以降、歴史はパパンケーキ以前とパパンケーキ以降に分断され、以後無数のフォロワーたちがその醜い屍を我々の前に晒すことになるだろう・・・とか考えていましたが、結局時代はパパンケーキに共振せずボクはこうして元気に生きてます。
その「パパンケーキ」を含んだ月島きらりのアルバム『きらりと冬』では“久住小春<月島きらり”なプロダクションがみられる名盤となっており“きらりんプロジェクト”はようやくここで完成したと言えるでしょう。それは単なる娘。メンバーのソロにしか過ぎなかった一枚目とポップながらアニソン色が強い二枚目を経て、ようやく“実際のアイドルがアニメキャラのアイドルを演じる”というこの歪なプロジェクトの真の旨味を引き出した、つまりアイドルソングの空虚さとアニソンの(いい意味で)嫌な感じを混ぜ合わせた訳の分からんものが生まれたということです(そういう意味では2ndの「こんにちぱ」や「ラムタラ」は一足早い“完成”だと思います)。その大きな要因としてはなんといっても前述の「パパンケーキ」で頂点に達した月島きらりが類い稀な“ボーカル力(ぢから)”を獲得したことにあると思います。“萌え”や“技術”に走らずただただ「イカれた」高音キンキンなボーカルは恐らく月島きらりでしか聴けないものでしょう。個人的な話になりますが、このボーカルに対する姿勢は他のジャンルにないものを聴きたくてJ-POPを聴きだした自分の初期衝動(=需要)と恐ろしい程合致しているので、ボクの月島きらり推しにも納得していただけることでしょう。
さてこのアルバム、実際「パパンケーキ」以上のマッドネスは収録されていませんが、格段に個々の曲質は勿論、曲順にいたるまでとにかく1stや2ndとは比べ物にならない程の作り込みがみられます。J-POPのアルバムでこんなに捨て曲が無いアルバムも凄いと思います(強いて言うなら「パピーラブ」「ソラミミドレミ」か)。しかしこれだけ完成度が高い作品にも関わらず、音程が微妙にズレているきらり嬢のボーカルの隙は編集せずしっかり残している所が正しくアイドルしているところも見逃せません。これは粗がまったく無くアンドロイドのような中川翔子よりよっぽどおもしろい出来になってます。曲単位では、文句無しの王道路線「コイサイン」、ピークタイムに威力を発揮するであろう四つ打ち「ラブチク」(下品に聴こえない大ネタの使い方!)、サビでのブレが心地良いウルトラ歌謡ボッサ「マスカラフル」、きらりの固い韻が炸裂する「ソラミミドレミ」、Back To The 90's Flavorな「ガムシャララ」等・・・全曲太鼓判ですす。 
あと踏み絵的一曲「タンタンターン!」について。耳障りが柔らかいせいでリリースされた当初はボクもついにMilky Wayも日和った曲出しやがったか、なんて知った様なことをほざいていたのですが、『きらりと冬』を通して聴くとアゲる曲が多いアルバムの中おとす部分として、楽曲単位で言えば“ブレイク”的な機能を果たしていることに気づかされました。つまり「タンタンターン!」は踊れる曲、所謂使える曲にしか反応できなくなっていた我々(特にDJ)へ本質的な音楽の聴き方を今一度問いかけていたのです。ちなみにこの「タンタンターン!」、よく聴けば曲自体もかなりのもので、特にベースの入り方と後半のエレピ(?)ソロが絶品です。明け方にこんな曲がかかったら間違いなくボクは泣きます。 
兎に角このアルバム、アイドルという枠内での最良の結果が出ています。必聴! 

今ネットで色々調べてて初めて知ったけど「アナタボシ」ってあのクラシック「ラムタラ」と同じ斎藤悠弥って人が作ってるんだ。そりゃーええ曲になるわ。
 

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