2009年12月11日金曜日

月島きらり『きらりと冬』



月島きらり starring 久住小春(モーニング娘。)の「パパンケーキ」。個人的にはついに理想のJ-POP誕生って感じの曲でした。これがリリースされた716日以降、歴史はパパンケーキ以前とパパンケーキ以降に分断され、以後無数のフォロワーたちがその醜い屍を我々の前に晒すことになるだろう・・・とか考えていましたが、結局時代はパパンケーキに共振せずボクはこうして元気に生きてます。
その「パパンケーキ」を含んだ月島きらりのアルバム『きらりと冬』では“久住小春<月島きらり”なプロダクションがみられる名盤となっており“きらりんプロジェクト”はようやくここで完成したと言えるでしょう。それは単なる娘。メンバーのソロにしか過ぎなかった一枚目とポップながらアニソン色が強い二枚目を経て、ようやく“実際のアイドルがアニメキャラのアイドルを演じる”というこの歪なプロジェクトの真の旨味を引き出した、つまりアイドルソングの空虚さとアニソンの(いい意味で)嫌な感じを混ぜ合わせた訳の分からんものが生まれたということです(そういう意味では2ndの「こんにちぱ」や「ラムタラ」は一足早い“完成”だと思います)。その大きな要因としてはなんといっても前述の「パパンケーキ」で頂点に達した月島きらりが類い稀な“ボーカル力(ぢから)”を獲得したことにあると思います。“萌え”や“技術”に走らずただただ「イカれた」高音キンキンなボーカルは恐らく月島きらりでしか聴けないものでしょう。個人的な話になりますが、このボーカルに対する姿勢は他のジャンルにないものを聴きたくてJ-POPを聴きだした自分の初期衝動(=需要)と恐ろしい程合致しているので、ボクの月島きらり推しにも納得していただけることでしょう。
さてこのアルバム、実際「パパンケーキ」以上のマッドネスは収録されていませんが、格段に個々の曲質は勿論、曲順にいたるまでとにかく1stや2ndとは比べ物にならない程の作り込みがみられます。J-POPのアルバムでこんなに捨て曲が無いアルバムも凄いと思います(強いて言うなら「パピーラブ」「ソラミミドレミ」か)。しかしこれだけ完成度が高い作品にも関わらず、音程が微妙にズレているきらり嬢のボーカルの隙は編集せずしっかり残している所が正しくアイドルしているところも見逃せません。これは粗がまったく無くアンドロイドのような中川翔子よりよっぽどおもしろい出来になってます。曲単位では、文句無しの王道路線「コイサイン」、ピークタイムに威力を発揮するであろう四つ打ち「ラブチク」(下品に聴こえない大ネタの使い方!)、サビでのブレが心地良いウルトラ歌謡ボッサ「マスカラフル」、きらりの固い韻が炸裂する「ソラミミドレミ」、Back To The 90's Flavorな「ガムシャララ」等・・・全曲太鼓判ですす。 
あと踏み絵的一曲「タンタンターン!」について。耳障りが柔らかいせいでリリースされた当初はボクもついにMilky Wayも日和った曲出しやがったか、なんて知った様なことをほざいていたのですが、『きらりと冬』を通して聴くとアゲる曲が多いアルバムの中おとす部分として、楽曲単位で言えば“ブレイク”的な機能を果たしていることに気づかされました。つまり「タンタンターン!」は踊れる曲、所謂使える曲にしか反応できなくなっていた我々(特にDJ)へ本質的な音楽の聴き方を今一度問いかけていたのです。ちなみにこの「タンタンターン!」、よく聴けば曲自体もかなりのもので、特にベースの入り方と後半のエレピ(?)ソロが絶品です。明け方にこんな曲がかかったら間違いなくボクは泣きます。 
兎に角このアルバム、アイドルという枠内での最良の結果が出ています。必聴! 

今ネットで色々調べてて初めて知ったけど「アナタボシ」ってあのクラシック「ラムタラ」と同じ斎藤悠弥って人が作ってるんだ。そりゃーええ曲になるわ。

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