一億総ポエマー時代、若しくは、一億総評論家時代、みなさん逞しく生きているでしょうか。
友人の人生の方向を決定付けたとされる名盤、Squarepusher『Ultravisitor』を今更聴いてみたけど・・・こりゃ凄い。
友人の人生の方向を決定付けたとされる名盤、Squarepusher『Ultravisitor』を今更聴いてみたけど・・・こりゃ凄い。
最近は「やっぱリズムっしょ」なんて知った口を叩いてのですが、これを聴くと「やっぱメロディっしょ」なんて知った口を叩きたくなる。というよりメロディがリズムにもたれかかってる?リズムががっちりしてるからメロディも活きて聴こえる?なんかそんな感じです。それぞれがそれぞれに依ってるっていうか、まさに仏教でいう縁起的というか。
まずは一曲目「Ultravisitor」のエモいメロディー。これで喰い付かなかったら嘘でしょう。「引き」の点において抜群の一曲だと思います。あと、メロディ面で言えば、やはり三曲目「Iambic 9 Poetry」はズバ抜けて良い、なんか悔しいんですが。あと、Hip Hop的アプローチの「50 Cycles」は相当クールな音。
上のエレクトロニックな三曲の間に一曲ずつアコースティックな短い曲を交えた計五曲の前半部分が原雅明氏も言っているようにこのアルバムの印象を決定付けている様です。それはつまり、振れ幅が広い!なんて単純なものではなくて、構成の妙というか。
かつて故DJ Klockが「DJ Krushが一曲作る労力で普通のヒップホップアルバムは一枚完成しちゃう。どうせ聴くなら手の込んだものを聴きたいじゃん。」的なことを言っていましたが、まさにこのアルバムの収録曲は全て凄い労力がかかってるように思えます。それは曲単体の起承転結の絶妙さもさることながら、それをすべて背負ってアルバム全体を聴かせていく進行具合というか。「一曲目と二曲目の流れ、二曲目と三曲目の流れ」じゃなくて「一曲目・二曲目と三曲目の流れ、一曲目・二曲目・三曲目と四曲目の流れ」を意識させるみたいな。う~ん、上手く言えませんが兎に角お上手なんですよ。
そして中盤からも基本的にエレクトロニック→アコースティックな構成なんですが、そこには「Ultravisitor」や「Andrei」の様なメロは存在せず、ただただカオスティックな音だけが重ねられていきます。この箇所は前半以上に曲単体の輪郭が分かりにくく、数曲まとめて一曲という感じ。その後12曲目「Circlewave」でようやく落ち着きを取り戻すと、「Iambic 9 Poetry」と双璧を為す(と思われる)「Tetra-Sync」に流れ込んでアルバムはついにクライマックスを向かえます。これは作り込まれた曲がズラリと並ぶ『Ultravisitor』の中でも特に複雑な一曲・・・いや、むしろアルバムの曲すべてがかなり作り込まれてようなので、複雑な印象を持つこの曲は逆に凄い分かりやすいのでしょうか。よく分かりませんが、そんな「Tetra-Sync」で全てをぶちまけたSquarepusherが再びメロを取り戻し、『Ultravisitor』は幕を下ろす。
凄いもん聴いちゃいました。繰り返しになりますが、とにかく構成が練られているので、自分の浅はかな解釈の余地があるこのアルバムはインストの懐の深さもしっかり示していると思います。あと、なんというかこういう展開がはっきり見えるDJミックスが作れたら理想でしょうね。
これを聴いてなかったのはもしかして世界でボクだけだったのかもしれませんが、とりあえずJazzかRockに興味がある人は皆聴いた方がいいでしょう。
読み返したら「凄い」って言葉が「凄く」雑に使われているので、これからは「ヤバい」にしときましょうかね。
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